2003年 第22回ユニバーシアード・大邱(韓国)大会
College Soccer Central


準決勝 日本−モロッコ戦 試合内容、監督・選手コメント、写真



試合レポート
 
試合記録


モロッコ戦システム  「2点目が勝負だと思っていたが、それまでよく粘って守ってくれた」。西田監督の言葉が物語るように、非常に厳しい90分間だった。立ち上がりから積極的な攻めを見せた日本は、開始早々の5分に決定的なチャンスを得る。準々決勝で負った怪我で不完全な中田に代わりスタメン出場となった前田の、右からからのクロスがペナルティエリアに走り込んできた山崎の前出バウンド。そのバウンドボールを山崎が左足でダイレクトにシュートすると、モロッコDFの虚をつく形で鮮やかな先制点を奪取した。
 しかし、その後はテクニック、身体能力ともに優れたモロッコに押し込まれる時間帯が長く続き、開始早々には機能していたサイドからの攻めも、防戦一方となってしまう。モロッコの波状攻撃にあわやというシーンが連続するも、日本はDFの踏ん張りとGK塩田の活躍でゴールを死守。結局1−0リードのまま前半を終了した。
 後半に入っても状況は変わらず、日本にとっては辛い時間帯が続く。しかし「モロッコのシュートは最後の詰めの部分で精度がそんなによくなかった」(GK・塩田)という日本は、雨あられと降るモロッコのシュートを跳ね返し、徐々にモロッコのテンポを崩しにかかる。「相手にボールを回させているという気持ちで戦う」(西田監督)という作成が校を奏し始めたのは、後半25分を過ぎてから。久しぶりのスタメン出場で精彩を欠いていた中後から、効果的なサイドチェンジのボールが出始めると、両サイドやFWからスペースをつく動きが見られるようになった。
 75分には疲れの見え始めた前田に変えてFWの原を右サイドに起用し、追加点のチャンスを狙うが、両チームともに決定的なチャンスを活かせないまま90分が近づく。そして、ロスタイムに入ろうかというそのときだった。ハーフウェーライン近くまで下がっていたFWの田代から長く抜けるパスが出されると、左サイドを山崎が疾走。DFをふりきってほぼフリーの状態でボールに追いつくと、そのままボールをキープしてシュート。土壇場で貴重な追加点を挙げる。さらには4分間と表示されたロスタイムの2分に、山崎と交代した兵働が相手のボールをカット。左サイドを上がっていた村山にボールが渡ると、村山のクロスにあわせて走り込んだ堀がコースを見定めて3点目をゲット。先制点を奪取してからの85分間、厳しい戦いを耐えてきた日本が、最後の最後にモロッコを突き放して勝利を手にし、2大会連続のファイナリスト権利を獲得。また、先に決勝進出を決めていた女子と合わせ、史上初の男女代表決勝進出を現実のものとした。

コメント


■西田裕之 監督

 決勝トーナメントに入ってからは楽な試合はないと思っていたので、こういう展開は覚悟していた。今日の相手は身体能力も高く、厳しい戦いになるだろうと思っていたが、守備面で弱い部分があるので、スペースをついてカウンターで攻めるようにと伝えていた。先制点に関しては、立ち上がりに相手の背後をついて取れたので狙い通りだったのだが、早い時間に点を取ったことで攻めようという気持ちが薄れてしまった面があったのかもしれない。
 ハーフタイムには、モロッコのトップ下が上がって3トップ気味になることもあるが、それにつられずに4バックを守ることと、背後を取られないように気をつけるよう伝えた。それと、相手の左サイドの守備が弱いので、右サイドにボールを出して勝負を仕掛けるよう指示した。モロッコはDFとDFのあいだがルーズになる傾向があったので、その間をつけば攻められるという話はしていたのだが、なかなかできなかったのが最後の最後、相手の運動量が落ちてからようやくできるようになった。
 このチームはまだ成長課程の状態なので、これだけ強いチーム相手に失点ゼロで押さえられたのは本当に大きい。選手全員に守備の意識があった。決勝の相手はイタリアということで、最高の舞台でやりがいのある相手と戦えることになったと思っている。イタリアは守備のチームなので、守りの点で負けないように頑張りたい。


■岩政大樹 主将

 準々決勝では1点を守り切れなかったけど、この試合ではディフェンスが踏ん張って、攻撃陣が点を取って勝つことができた。ハーフタイムにみんなには「前の試合と同じことをしないようにしよう」と話したんですが、それを実践できたんで、すごくよかったと思います。
 厳しい時間帯が長かったのは確かだけど、このチームは練習試合でも相手にボールを回されるような展開を経験してきたので、その中で集中力を切らさないようにっていうことは気をつけていた。また、それが試合の中で実践できたのは、またひとつチームとして成長できたからじゃないかと思う。


■塩田仁史 選手

 結構立ち上がりからずっと攻められていたんですけど、カウンターで1本こられるよりも、ゴールと向かいあって相手の攻撃を受けていたほうが、リズムにはのれっていう部分はありました。DFとも話し合って、最後の最後まで粘ってコースを限定してくれれば、自分の守備範囲も狭くなるし、組織的に守っていけば必ず守り切れると話し合っていたんで……。確かに攻められる時間は長かったけど、相手のモロッコも決定的なシーンや最後の詰めの部分で、そんなに精度のいいボールやシュートがなかった。だから、ここでしっかり止めておけば、FWが点を取ってくれると思っていたんで最後まで我慢できました。


■山崎雅人 選手

 1点を取ってからは、縦の関係で守備をしろという指示があったんで守備していたんですけど、チャンスがあれば裏を狙おうという感じでプレーしていて……。最後の最後でチャンスがあったんで、2点目を取りに行きました。FWとしての攻撃の時間は短かったけど、チームとして動けていればFWが点を取らなくても勝てるっていう気持ちがあったんで、そんな辛い気持ちはなかったです。
 このチームはFWが決定力不足っていわれていたんで、(田代)有三となんとかして点を取って見返してやろうっていってました。有三は1点しか取ってないんですけど、有三がいて始めて自分も裏を狙えるんで、有三のおかげという部分が大きいです。


■中後雅喜 選手

 ずっと試合に出たかったので、初めてのスタメンはうれしかったけど、前半30分までは体力的に本当に辛かったし、倒れるかと思った(笑)。ただ、30分を過ぎてからは身体が慣れてきたし、後半からはいつも通りのプレーができたと思う。
 サイドチェンジのパスについては、ハーフタイムにモロッコに対してはサイドを使うような展開が効果的と言われたでやった部分もある。
 体力はまだ完璧とはいえないが、決勝に出られたらぜひ頑張りたい。



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