2001年 第3回東アジア競技大会 サッカー競技
College Soccer Central


予選リーグ 韓国−日本 試合レポート、監督・選手コメント



試合レポート
 
公式記録
戦評


韓国戦・平川  今年4月に行なわれたデンソーカップでは2−0と韓国に圧勝。4年前の東アジア大会でも1−0で勝つなど、対韓国戦では4戦4勝と負けなしの日本代表・瀧井監督。しかし、試合は連勝中の日本が有利とは言い難く、むしろ今までのどの日韓戦よりも厳しい展開となった。「我々は、ふだんいくつかのゲームプランをもって試合に臨む。今日の試合に関していえば、前半は順調でプラン通りの試合ができたが、最後のほうは我々が用意していたプランのうち、最悪のゲームプランで戦わなければならなかった」。試合後の瀧井監督のこの言葉が、“5連勝”とはほど遠かった日本の試合内容を端的に表しているといえるだろう。
 デンソーカップの来日メンバーを一新、Kリーグ所属のプロ選手5人を擁する韓国に対し、日本は中盤のシステムを変更。(6)堀之内に加えて(14)吉村をスタメンで起用し、今大会初のダブルボランチで韓国の速く厚い攻めに対応する布陣をとった。
 試合は予想通り韓国ペースでスタートしたものの、日本の中盤からの積極的なチェックが効いてか、韓国は決定的なチャンスを作るまでには至らない。とはいえ、日本側も(11)深井のドリブル、(7)羽生の2列目からの飛び出したといった攻撃のためのスペースを韓国に封じられ、得点機を掴むのはなかなか難しいかと思われた。
 そんな、日本にチャンスが巡ってきたのは思いの外早い時間帯だった。6分、ペナルティエリア前でボールをキープし、シュートを放とうとしていた(9)太田が韓国DFに倒されてFKのチャンス。しかし(10)山根の放ったシュートは、わずかにバーの上。その後も両チーム一進一退の攻防が続くが、13分には再び太田がペナルティエリア前で倒され、数分前とほぼ同じ位置でFKのチャンスが訪れる。「1回目はちょっと高かったから、低めに蹴ろうと思ってた」という山根のシュートは、そのまま緩やかなカーブを描きゴール左隅に吸い込まれる。「蹴った瞬間はボールの軌道が見えなかったので、ゴールしてから初めて(シュートが)入ったとわかった」(同・山根選手)。韓国GKが一歩も動けないファインシュートで、日本が貴重な先制点を挙げた。
 一方の韓国も17分にCKからシュートを押し込むものの、これはゴール前の混戦でファウルがあったとしてノーゴールに。運に助けられた部分もあったが、依然リードを守る日本はボランチ吉村の好判断や(2)平川、羽生といったサイドの突破から流れを押し戻そうと奮闘。吉村から羽生、山根から深井といった展開から、何度かいい形での突破が生まれる。しかし最終的な攻め手の人数が足りずに、結局追加点をあげられないまま前半は終了。互いに攻め合う拮抗した前半戦となったが、日本には韓国の速いパス回しに対応しきれないシーンも見られ若干の不安も残した。
韓国戦・高原  はたして後半、その不安は的中した。1点を追う韓国は、キックオフの笛とともに猛攻を開始。両サイドからの突破を徹底し、それに(7)キム・サンロク、(8)キム・チャンヒョンらが絡み何度となくゴールに迫る。日本は、そんな韓国の速い展開の前にDFラインを押し上げられず、攻撃に転じることができない。61分にはFWの深井に代えてMF(8)藤田を投入。太田を1トップ気味に残し、中盤を厚くしてなんとかボールをキープしようと試みる。そのかいあってか山根、羽生らがチャンスを作るもののゴールまでは至らず、70分すぎには再び韓国が波状攻撃を開始。75分、80分、85分と韓国が立て続けに決定的なチャンスを得るも、GK高原の好セーブとDF陣の踏ん張り、そしてキャプテン平川の的確なカバーリングで韓国にゴールを許さない。87分には韓国が続けて3つのCK。しかし日本は必死のディフェンスでゴールを死守。前半の1点を守りきり、そのまま逃げ切るかと思われた。
 しかし、試合終了間際の89分に韓国に再びチャンスが訪れる。右サイドからのスローインボールを中盤で(3)パク・ユンファ、キム・サンロク、(6)チョン・ジェウンが速いテンポでつなぎ、左サイドにフリーでいる(16)ヒョン・ヨンミンにパス。ゴール前に送られたヒョン・ヨンミンのクロスに、(10)イ・ジョンスがヘディングで飛び込んで、韓国が同点ゴールを挙げる。試合は振り出しに戻り、まもなく後半終了。勝負は延長戦に持ち越されることになった。
 延長戦に入ると、日本の瀧井監督は大胆な賭けに出る。いったん5枚に増やした中盤を再び4枚にし、前線を2トップに変更。そこで羽生に代えてトップに投入されたのはCBの(4)岩政だった。長身の太田と岩政を前線に置き、残り30分をパワーサッカーで押し切ろうという試みだ。しかし試合の流れは同点に追いついた韓国にあり、日本はボールを奪うのが精一杯。なかなか2トップまでボールを送ることができない。それでも延長前半7分には右サイド藤田の突破からクロスが上がり、岩政が得意のヘディングでシュートを押し込むものの、シュートはゴールの右外。延長後半に入ると「トップに岩政を入れたら、DFラインが(ロングボールを)蹴ってくる。そのこぼれを拾う形」(吉村選手)で吉村がトップ下まで上がって攻撃参加。だが全体的に疲れの見える日本は、中盤でのルーズボール、セカンドボールをキープできず攻撃も単発に終わりがち。一方の韓国は同点ゴールを決めたイ・ジョンスにボールを集めるが、決定的なチャンスをことごとく日本GK高原のファインセーブに阻まれ、圧倒的に攻めながらもゴールを挙げることができない。結局延長戦も両チーム無得点のまま終了。勝負はPK戦に委ねられた。
韓国戦終了直後  韓国先制で始まったPK戦は、日本GK高原がいきなり韓国の1人目のキッカー、(20)パク・ドンヒョクのシュートをストップ。しかし日本も1人目のキッカー、山根のシュートも韓国GKイ・チャンミンに止まられてしまう。2巡目、3巡目のキッカーは日韓両チームとも順当に決めたが、韓国4人目のキッカー(15)ファン・サンピルのシュートを高原が右手1本でセーブ。昨日まで風邪で高熱を出し、今朝方まで出場を危ぶまれていたという高原だったが、試合中で見せた集中力をPK戦でも発揮。会心のセービングに思わずガッツポーズが出る。その後は日本の(5)三上、韓国のヒョン・ヨンミンがともに決め、日本5人目のキッカーはキャプテンの平川。平川は慎重にボールをセットしたあと、ゴール右上に確実にシュートを決めて試合は終了。日本は韓国のサッカーに圧倒されながらも、GKとDFの好守備で1失点までにとどめ、PK戦を制して決勝への切符を手に入れた。

(写真右上=的確なカバーリングを見せ、韓国の攻撃で封じたキャプテンの平川)
(写真中=韓国の猛攻を気迫のセーブでストップ。この試合の立役者、GK高原)
(写真下=PK戦終了後、決勝進出を喜ぶ日本イレブン)

コメント


■日本代表 瀧井敏郎 監督

 前半に関しては順調で、韓国(の攻撃)への対応もできていたし、何度かチャンスも作ることができた。ただ、そこでもっと点を取れていれば、後半にこんなに苦しむことはなかったと思う。ボールを拾ってからの攻撃が徹底できないうちに相手にリズムを掴まれ、非常に苦しんだ。最終的に追いつかれてしまったが、本来DFの選手をFWにしパワーサッカーでなんとか逃げ切ったという感じだ。中盤に関しては、韓国は攻撃に人数を多くかけてくるスタイルだったので、どうしても中盤に多くの人数をかけざるを得ないし、下がり気味になってしまう部分はあったと思う。
 GKの高原は昨夜37.9℃の熱をだし、今日の出場もあやぶまれていた。しかし、ドクターの適切な処置もあって今朝方回復。体調のよくない所をよくがんばってくれた。昨年のオーストラリア遠征ではまだ経験の足りない部分もあったが、その彼がここまでやれるようになったということをうれしく思う。彼のファインセーブなしには、今日の勝利はなかった。
 自国開催のこの大会、我々は勝つために大阪にきた。決勝に進めたということは非常に大きなことだと思う。何より、最終的に大きなステージでプレーするために、選手自身ががんばって勝ち進んだことを大変うれしく思っている。


■日本代表 山根伸泉 選手

韓国戦山根・FK前  オーストラリア戦のときもそうだったが、この試合も相手のパス回しが多くて、少しひき気味の位置になってしまった。パスを回されてしまうと、どうしても相手に置いていかれてしまうことが多くなるし、向こうよりも多く走る文(体力的にも)きつくなってしまう。中盤がダブルボランチのときは、基本的には僕が攻撃さんかで、そのときにできたスペースを吉村が埋めるという感じになっているが、今日は押し込まれ気味で跳ね返すところまでしかできなかった。
 今日はPK戦だったので、決勝は90分で決着をつけてキッチリ勝ちたい。



■日本代表 吉村圭司 選手

韓国戦・吉村  韓国は17番の選手にあわせてくると思ったので、そこからのセカンドボールを堀之内と一緒にケアするということに気をつけた。韓国はプレスをかけてもパス回しをしてくるので、しんどい部分があった。けど、もっとプレスをきつくすれば競れる部分はあったと思う。
 ダブルボランチのときの自分の役割は、全体の押し上げと残った相手の中盤にプレッシャーをかけること。どちらかといえば守備は堀之内で、自分はできるだけ前のほうでプレーするようにしている。ただ、基本的にはサポートという意識が一番心がけている。インドの大会のときと比べると、バランスや連携の部分はよくなったと思うが、まだボールをもらったりするときの判断に納得いかない部分がある。  決勝に関しては、まずは試合に出られるようアピールしていきたいし、試合に出られたら今日以上のプレーをしたい。

Text/Photo:Reiko Iijima

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